Yahooニュースで最近『○○線の終着駅△△には何があるのか』といった記事を見掛けます。なるほど確かに言われてみるとソウルメトロでも終点まで行ったことのない路線の方がずっと多く、中でも市内中心部を通る1号線北側の終着、逍遥山(ソヨサン)は駅名自体に何となく趣があるので気になっていました。
ソウルも4月に入ってやっと春らしくなってきたので一昨日、その逍遥山へカミサンと行ってみました。
1号線のデッドセクション
拙宅のある新道林は1号線と2号線が交わる便利なロケーション。先ずは朝食を食べがてら市庁駅へ。KTXも通る京釜線に並行して走り漢江を渡ります。
1号線は市内中心部の地下区間だけが直流1,500V、それ以外は25,000Vの交流電化。ソウル駅の直前にデッドセクションがあり、ここで直流に切り替わります。
デッドセクションでは一部の室内照明が消えます。
「すまコムタン」で腹ごしらえ
目当てにしていた市庁近くのプゴックク(干し鱈スープ)の店が臨時休業だったのでソルロンタンの店に行きます。
はて、看板の「すまコムタン」とは何?と一瞬分かりませんでしたが濁りの無い「澄んだ」「澄まし」スープと伝えたいようです。最近は翻訳ソフトが良くなったのでこういった珍訳迷訳が少なくなり、少々寂しくもあります。
スープを炊く釜。
つまみになるメニューもあり、ここで一杯やるのも良さそうです。
シュワシュワと沸くコムタンが供されます。
程良く漬かったキムチ。
横綱ラーメンのように葱は入れ放題。
スープは日本人の口に合う旨味の濃さ、と言うことは韓国人にはちょっとしょっぱ目かも。麺を入れたら牛骨ラーメンとしても成立しそうなスープが美味でした。
京元線を北上
この路線はソウル(旧”京城”)と現在は北朝鮮の元山(ウォンサン)を結ぶため日本統治時代に開通したものの南北分断によって韓国側は白馬高地が北端の終点となっていますが現在はKORAILの近郊列車は逍遥山が終点で、その先は運行がありません。
市庁駅から再び1号線に乗り、適当に途中下車しながら北上。車窓から変わった形の水路が見えたので降りてみます。
降りたのは石渓(석계/ソッケ)という駅。ソウル中心部から20分程のロケーションながら巨大アパートは少なく、古くからの住宅エリアといった雰囲気。昔ながらの商店が並ぶ通りもある良い街でした。
駅は川の上を跨いで設けられています。
極寒の冬がやっと終わり、ソウルでも桜が咲き始めました。
ここからは終点逍遥山まで車窓を眺めながら1時間程の乗車。郊外に差し掛かるとゴミ焼却場や山が見えたかと思うとニュータウンの開発現場があったりします。
一昔前までは北朝鮮との軍事境界線”DMZ”(非武装地帯)に近いエリアは不人気だったのですが不動産高騰でそうも言ってられなくなったのでしょう、高層アパートの建設が進められています。
途中まで空席の無かった車内も終点に近づくとガラガラ。
逍遥山にて
バラックのような家を眺めながら逍遥山駅に近づきます。
現在ここから更に北の漣川(연천/ヨンチョン)まで都市圏電化工事が進められており、工事は大詰めを迎えています。
そのため、到着した逍遥山駅は仮設ホームでした。
到着した仮設ホームは片側のみで、列車はここで折り返します。
ハイキング客を相手に商売する駅前の飲食店。
駅前の飲食店通り。ここを抜けるとハイキングコースがあります。
豆腐や山菜料理、ドジョウ汁の店など、ジジババ向けの店が連なる通り。
とにかく高齢者が多い。カミさん曰く「韓国の巣鴨だね」
廃ホテルの横では演歌のコンサート。
”칡”という見慣れないハングル。辞書を引くと「葛」と出ました。
どうも葛の根のようで、この搾り汁に薬効があるのだとか。
更年期、アルコール肝臓解毒、心疾患、糖尿、疲労回復とかエストロゲンなどの薬効が列記されていますがホンマかいな。
果敢に搾りたてのエキスを買ってみたぜ。1本5千ウォン≒5百円。
味は... 見た目ほどエグくはないものの、ジャングルで遭難でもしない限り積極的には飲みたくないかな。
駅の反対側には浅い川が流れています。
建設中の新線、その先にはトンネルも見えます。
「あなたを愛する人たちがいます」というメッセージと共に精神健康福祉センターと自殺予防センターの電話番号が書かれたボード。韓国の自殺率はOECD加盟国の中で最も高いという現実があります。
ブテチゲを食べに義政府へ
逍遥山駅周辺を1時間程ブラブラとまさに逍遥しソウル方面に戻ります。目指すのはブテチゲ発祥の地、義政府(의정부/ウィジョンブ)。ソウル市内では頻繁に運行されている1号線もここ逍遥山発着列車は1時間に2本。義政府までは約30分で、そこからは運行本数も増えます。
逍遥山発の列車は全て仁川行きの各停。通して乗ると3時間近く掛かります。
ここでもシニア層のハイキング客だらけ。JRのフルムーン利用資格を得て久しい我々夫婦もここではまだまだ洟垂れ小僧でありました。
余談
大都市の中心部を抜けると住宅地が広がり、その先にはちょっとした観光地でもある山があるという部分では首都圏の中央線にも似ていると感じたソウルからの1号線・京元線でした。
因みに葛の根エキスの薬効ですが... このあと15時頃からブテチゲを食べながらの昼酒に突入した割には悪酔いしなかった気はします。気のせいだと思いますが。
次回はブテチゲ発祥の店、義政府市の「オデン食堂」本店編です。