私が今暮らす新道林(シンドリム)にはシェラトンホテルがあり高級車が出入りしています。前の道を歩いていると黒塗りのベンツが2台停まっていました。
ほう、前はSクラスのマイバッハか。後ろのベンツは...?
”キムチベンツ”こと(勝手に命名)双竜自動車のチェアマンでありました。
改めて、こちらがメルセデスのSクラス。
こちらが双竜のチェアマン。この類似っぷりは今に始まったことではなく、また、単なるパクりと言い切れないのが面白いところです。
双竜自動車とは
本来の漢字は旧字の雙龍、ハングルでは「쌍용(サンヨン)」、英字表記は「SsangYong」。経済ニュースで名前を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう、度々経営危機や会社更生を経験しています。
上海汽車を経て現在はインド・マヒンドラ傘下にあるものの会社自体を絶賛売り出し中。元々トラックやオフロード車から始まった会社でSUVがメインというイメージがあります。
双竜デザインの金字塔RODIUS/ロディウス。この姿、実車を初めて見た時は衝撃でした。
BBCのTop Gearで「自動車史上最も醜いクルマ」と言われただけのことはあります。トラック系のP/Fに無理やりミニバンの車体を載せた迷車であります。
で、双竜はダイムラー・ベンツと提携していました。ダイムラーとしてはアジア拠点の一つにしたかった模様です。
「キムチベンツ」チェアマン
高級車セグメントに進出したかった双竜、この提携を悪用 活用して作ったのが問題作チェアマン。Chairman=会長なのでPresident/プレジデント=社長よりも偉いのです。発売時のキャッチコピーは「ベンツの血統」でした。
フロントグリルやライトの形だけでなくテールランプ表面の凸凹も当時のベンツそっくり。業務提携でノリノリだった朴さん李さん、良い仕事してます。
プレスドアはセルシオに通じる雰囲気があります。
ベースになったプラットフォームはW124メルセデス。
デザイン自体はW140 Sクラスの方が更に似ている気がします。
裁判沙汰になりそうなほど酷似していますが(実際、かなり揉めた)チェアマンを輸出しないと双竜が約束したことで手打ちになりました。それ以外にも、チェアマンのエンジンやATなどは提携先ベンツから購入するため、ベンツとしてもビジネスになるという判断もあったと思います。
2003年マイチェン後の後期型。
W210・Eクラスと見比べると朴さん李さんは今回も良い仕事をしたことが分かります。
その後2008年にフルモデルチェンジ。メルセデスだけでなくアウディやBMWテイストも織り込んだスタイル。朴さん李さんの腕は円熟の域に達した感すらあります。
それでも愛されるチェアマン
当記事中、街角でのチェアマンの写真は私が撮ったものですが、どのチェアマンもそこそこ綺麗に乗られているように見えました。特にこの個体は初代の初期型なので20年は経っている筈ですがホイールまでピカピカ。大切にされていることが伝わります。
韓国は欧米や日本のような旧車趣味は殆ど無いようで、こういった一昔前の迷車珍車を見掛ける機会は少なくなってきました。また、韓国車のデザインも随分洗練されてヘンテコ・パクリ車自体が減りました。これからもマメに写真を撮って記録を残そうと思います。