私が今住むシンドリムの近くに文来(문래/ムンレ or ムルレ)という街があり、古くからの町工場が立ち並ぶ中に近年は個性的なカフェやレストランが少しずつ増えています。先週末はその昭和的雰囲気のエリアをMFフィルム時代のレンズで撮りがてら歩いてきました。
オールドレンズとタイトルに書きましたがライカの「ズミ何とか」や「何とかックス」は持っていないし、そもそもよく分かりません。レンズは「Ai Zoom Nikkor 35-70mm F3.3-4.5S」という往年のニコンMF普及ズーム。
カメラはD850。いつもは頼もしく感じる4575万画素が今回このレンズには残酷にも感じますが、どうなるのか?
冒頭の一枚はこのショットをモノクロ化したもの。いつ通っても工場の前でおとなしくしている賢い犬です。
写真全体が醸し出す昭和っぽい感じは単なるピンボケなのかと思って拡大したところ、一応目のあたりにピントは合っています。後ろの金属くずがリング状に玉ボケしているのが面白い。
近日中に建て替えられることが決まった高度成長期のアパート。
전진공구=前進工具、力強くて良い名前です。
木の葉が秋の色を帯びてきました。
古いレンズを持つと錆びたトタン板や鉄パイプを撮りたくなるのは私だけ?
ところで、この記事は古いレンズのアラを探すのが趣旨ではなく、独特の”昭和感”を醸すものは何なのか?です。それをお断りした上で拡大してみます。
左上端、流れてますねぇ。光は滲んでフリンジも出ています。
白い袋もフリンジだけでなく、これを中心にオーラが出たようになっています。
鋼管端からはまるで青い炎のようなフリンジ。
電線の地下化は進んでいるソウルですがここでは力強く空に張っています。
左上を拡大してみました。
こちらは中央部分の拡大。十分しっかり写っています。
意外にゴーストは少なかったですが出るときは出ます。そもそも全体が霞んでますね。こちら側も向こう側も日陰だったと思います。
目当ての中華屋で軽く飲みます。
酢豚で一杯やります。
町工場の向こうは再開発され高層ビルやホテルが聳えます。
白いミニバンの部分を拡大。光の滲みも独特の雰囲気につながっているのかな。
手振れ補正が無くても小さいレンズなので何とかなります。
「光の向こうに人の暮らしを感じる」と言うと気取り過ぎかな。
右上部分の拡大。
勿論絞りは開放。40年近く前のズームレンズでここまで写るのは意外です。
そろそろ我が町シンドリムに帰ります。
何となくモノクロ化してみました。
コンビニで4缶1万ウォンの韓国クラフトビールを買って軽く二次会。
果物屋の前で一服するバイトの兄ちゃん。
元々はソウルの中古カメラやでFG-20とセットで買った、というか気分的には”保護”したレンズ。今回久々に使ってみました。
1980年代初頭発売のようですが、しっかり旧製品としてサイトに載せているニコンは偉い。絞り開放値を入れてやれば大半のFマウントレンズを使えるD850も偉い。
レンズのお陰なのか?よく分かりませんが、ムンレ独特の空気感を少しは切り取れたのかなと思います。それから、最新のレンズが長年の研究開発のお陰で物凄く正確な写りを実現していることも改めて実感しました。
それにしても久々のMFズームは楽しかった。ズーム中間域は殆ど使わず(そんな細かいことをやる余裕がない... 汗)、先ず画角を「脳内レンズ交換」的に35mm、50mm、70mmでざっくり決めて撮るのは楽しいひと時でした。