リフレッシュ休暇で行ったヨーロッパ。フランス、スペイン、ドイツの三カ国を周るというスケジュールの中で”乗り鉄”も楽しむべく、パリからバルセロナは寝台列車で移動した。 憧れだった国際寝台列車に乗れるだけでなく、夜パリで乗車して一泊するとバルセロナには朝到着するので時間の有効活用という面でも大正解だった。
※TGVのスペイン乗り入れ開始等あって、エリプソスは2013年を以て廃止された模様。もうこんな素晴らしい列車に乗れないとは誠に残念としか言いようがない。
この時(2012年6月)乗車したのは"ELIPSOS"。SNCF=フランス国鉄とRENFE=スペイン国鉄が共同運行していた列車だ。
エリプソスの路線図。 パリからはバルセロナだけでなくマドリッドへの列車もある。
我々が乗った列車はパリ20:23発~バルセロナ8:05着だったが他の路線も概ね同様で、いずれも夜発、朝着の時間設定である。 緯度の高いヨーロッパは夏冬で日照時間が極端に違うので、冬場はずっと真っ暗な中を走るのだろう。
ヨーロッパの観光路線は早目にチケット確保した方が良い。この時は「ヨーロッパ鉄道チケットセンター」を利用した。家族3人合計で97,800円と中々の金額だが、海外出張で使っている某大手代理店にも問い合わせた金額は16万円以上だったので(正規運賃?)、それよりは大幅に安く取ることができた。
パリではAusterlitz(オステルリッツ)駅から出発する。北駅やリヨン駅に比べるとやや小規模な駅だ。この時は改装工事中で雑然としていて国際列車に乗る高揚感を少々殺がれたことは否めない。
国際列車も発着する駅だが、今やEU域内は原則として往来自由なので特に入管のような施設は無い。
エリプソスが発着するホームに行ってみたら未だ入線しておらず、この日の牽引機だろうか、ファニーな表情の古びた機関車がポツンと佇んでいた。
高い天井や構造材の装飾など、やはり趣がある駅舎。
櫛形レイアウトの駅なので手前のポイントは機関車の折り返し用だろう。
手動式のポイント切り替えレバー。
このオステルリッツ駅からは徒歩でもセーヌ川を渡ってリヨン駅に行ける。
オステルリッツ駅の案内板。
我々が乗るのは上から5番目、列車番号477のJUAN MIRO(ホアン・ミロ)号。
フランス国鉄でお馴染みのフロント窓が前傾したゲンコツ形電機機関車を多数。
このスタイルでも200km/h出せるタイプもあるようだ。
似たスタイルで直流形、交流型、交直流形があるらしい。日本だとEF60/EF65、EF70、EF81のようなものと言えるだろうか。北総鉄道に似たような雰囲気の電車があった気がする。
前面に貼り付いた虫の死骸に群がっているのか、やたらと雀が多かった。
そうこうしている内に我々が乗るエリプソスは入線していた。最後尾は電源車が連結されている。スペインのカニ21。
エリプソスの車両は所謂「タルゴ」と呼ばれるもの。メカニズムは独特だ。
- 台車と言うか、車輪は一軸の連接式。
- 一軸と書いたが左右の車輪を結ぶ車軸は無くて左右独立懸架。それによりフロア高が低い。
- 左右独立式なので車輪を線路方向に向かせてやる必要がありステア機構を備えている。
- 標準軌⇔広軌に合わせて軌間が可変式。
- 乗車時には気付かなかったのだが側面の列車名の表示部分に"TALGO PUNDULAR"と書いている。英語でPendulumとは振り子。帰国後調べてみるとこのタルゴ、振り子式機構も備えている。
これ、開発に携わった技術屋さんは楽しくて仕方なかったのではないか。
左右から車輪のステア機構と思われる長いロッドが伸びている。また、車両と車両の間はダンパーらしき機構を介して繋がれている。
段差は踏板程度しかない車内の連結部分。
前置きが長くなってしまった。そろそろ乗車しましょう。ホーム上でチケットと引き換えにカードキーをもらって乗車する。
グランクラス(一等寝台)のコンパートメント。ベッドを出さない状態では簡易シート的な座席なので昼間列車としての使用は余り考慮されていないようだ。
Lサイズのスーツケースを広げるのは無理な広さ。
トイレとシャワールーム。
トイレから見たコンパートメント。
ミネラルウォーターは一部屋に4本備えられていた。
シャワーは湯量十分で温度も安定しており快適だった。
走行中の揺れでガタガタ鳴らないよう、ズッシリと重い金属製のハンガー。下側にはゴム製のプロテクターが付いているので壁に触れてもガタガタ鳴ることはなかった。
バスルームの上には収納スペースが設けられている。
タルゴは車両長が短いこともあるが、この見取り図によるとグランクラスだと1車両に5室だけのようだ。
グランクラス以外では、バスルーム無しの4人部屋や2人部屋のツーリストクラス、横2×1=3人掛けの座席車もある。
備え付けのパンフレットや機内誌。 記念に一冊持ってくればよかった。
そうこうしていると、夕食の準備が整ったと車掌が呼びに来てくれた。ディナータイムはグランクラスの乗客が一応優先だが席が埋まってしまうと遅い時間まで待たされることもある由。急いでダイニングカーに向かう。
一等車の廊下。
>次回は食堂車での夕食編です>